占術 / 易

易経入門 — 古代中国の占いの起源と仕組み

Lunaple · 2026年6月26日 · 日本語

「易経(えききょう)」は、東アジアで最も古い古典の一つに数えられる書物です。原型となった本文は「周易(しゅうえき)」と呼ばれ、その核は古代中国の西周期(おおむね紀元前1000〜750年頃)に成立した占いのマニュアルでした。書名にある「易(えき)」とは「変化」を意味します。万物が移り変わる様を読み解くための書、というのがその出発点です。漢学者エドワード・ショーネシーは、青銅器銘文との言語比較から、本文が現在の形にまとまったのを紀元前9世紀の最後の四半期(宣王の時代)頃と位置づけています。

八卦と六十四卦 — 記号で世界を写す

易の仕組みは、二種類の線(爻=こう)から組み立てられます。途切れのない一本線が「陽(⚊)」、中央が空いた線が「陰(⚋)」です。この陰陽の爻を三本重ねると、組み合わせは二の三乗で八通りになり、これが「八卦(はっか/ばっか)」です。三本すべて陽の卦は「天」、すべて陰の卦は「地」を表します。さらに八卦を二つ上下に積み重ねると六本線の図形になり、組み合わせは二の六乗で六十四通り。これが「六十四卦」で、それぞれが人生の局面や状況の型を示すとされました。

周文王と十翼 — 占書から古典へ

伝承では、殷(商)末に幽閉された周の文王が各卦の卦辞を記し、その子・周公旦が各爻の爻辞を加えたとされ、八卦の起源は伝説上の人物・伏羲(ふっき)にさかのぼると語られてきました。ただし、こうした帰属(後漢の学者・馬融らによって整理された通説)は、今日の学術研究では文字どおりの史実とは見なされていません。占いの書だった周易を哲学的・倫理的な古典へと押し上げたのが、後世に付け加わった注釈群「十翼(じゅうよく)」、別名「易伝」です。十翼は儒家の系譜に連なる人々が戦国時代から前漢初期にかけて著したもので、孔子その人の作ではないと考えられています(中心をなす『繋辞伝』は紀元前300年頃)。こうして易は、未来を言い当てる道具から、変化の原理を通じて自らを省みる思想の書へと姿を変えていきました。

出典: 本記事は、周易の本文と注釈群「十翼(易伝)」を基礎とし、易経研究の学術的記述(漢学者エドワード・ショーネシーによる紀元前9世紀の成立年代の推定、後漢の学者・馬融らに由来する伝統的帰属とその現代的再評価など)を参照しました。1973年に馬王堆から出土した帛書(はくしょ)の易や、リヒャルト・ヴィルヘルム独訳(1923年)を底本とするケアリー・ベインズ英訳(1950年)は、テキストの伝来を裏づける資料として知られます。卦の意味は未来の予言ではなく、内省と自己理解のための手がかりとして示されるものです。
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